今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
まだ帰りたくない
「わかった、じゃあ今から私がお兄様を呼んできたらいいんだね」
「うん、ごめんね歌ちゃん。こんなお願いして」
旅館の部屋の隅っこで歌ちゃんとコソコソと話していた。
誰にも知られてはいけない悪だくみ。
合宿は今日で終わり。
夕方、帰る時間が近づいてきていた。
他のみんなは帰り支度で追われていて忙しそうだ。
私は、ある作戦をたてていた。後は実行に移すのみ。
歌ちゃんに兄とのことを全部打ち明けたら、喜んで協力を申し出てくれた。
「千桜たちの役に立てるなら何でもするよ。それでどっちにする?腹痛か頭痛か」
「そうだね、じゃあ頭痛にしておこうかな」
「おっけ、助演女優賞並みの演技をしてくるよ」
彼女はウィンクして自信満々の笑みを浮かべる。
いつもどおりに元気を取り戻しているみたいで、本当に頼もしい。