今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

前髪をかきあげて、ふぅっとため息を吐く彼。


「じゃあ、嬉しい？」


「……どうかな、嬉しいような嬉しく無いような」


「ひどい」


「や、その……俺にもいろいろあるから」


「もしかして、お父さんのことが気になる？」


「まあ、それも。気にならないと言えば嘘になるよな」


「だから、なおさらこのままじゃ帰れないの」


「え？」


「今日帰らないってことはお父さん達への宣戦布告になるはずだよ」


「は？宣戦布告って戦うのか？」


彼は耳慣れない言葉にますます困惑している。


「そうだよ。　
今日外泊することがきっかけになる。
そのくらいの覚悟を見せたいの」


「覚悟って、え？チー？」


「私ね、このまま帰ったらまたお父さんたちに何も自分の意見を言えなくなると思うんだ。
争いを避けて、また部屋に閉じこもっちゃう気がするの。
だけどもうそんなのは嫌」


「わかるよ、チーの気持ち。でもこんなやり方はよくないんじゃないか」