今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うん、お父さんに今日は彼氏と外泊するって言うから」


「いや、それだけはやめた方が。せめて母さんに」


慌てて止められたけど、聞く耳もたない。


本当はもっといい方法があるのかもしれないけど、今の私にはこうすることが最善だって信じていた。


「お父さんに言わないと絶対に駄目なの」


「いや、でも父さんが聞いたら泣いちゃうんじゃないかな。チーが男と……」


心配そうにする彼の顔から血の気が引いていく。


自分のスマホからすぐに父に電話をかけたけど、応答がない。


どうしょうかちょっと考えて、留守番電話をのこすことにした。


兄はおろおろしながら、黙ってこちらを見つめていた。


「もしもしお父さん?千桜だよ。
私、今日は家には帰りません。
彼氏とお泊まりするから。帰ったら私たちの話を聞いてください」

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