今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
まだこれだけじゃ足りない。思いの半分も伝わらないよ。


勇気を振り絞って、父の心に少しでも響くように訴えかけた。


「とっても大好きな人なの。
だから、私たちの交際を認めて欲しい。
お父さん、彼は私の運命の人だよ。
私ね、運命はちゃんと自分で選んで掴み取りたい。
私の幸せを誰にも決められたくないの。
明日帰ったらちゃんと話すから、ちゃんと聞いてね」


話しているうちにのどの奥が熱くなってきた。


生まれて初めての父への反抗はちょっぴり胸が痛む。


電話を切った後、凄いことをしてしまったっていう実感がじわじわと湧いてきた。


「ああ……。もうこれで取り返しがつかないね。
明日一緒に帰った時にお父さん、どんな顔をするだろう。
今から楽しみだね」


強がって明るく笑ってみせる。


だけどすぐに罪悪感……みたいなものに押しつぶされそうになった。


急に怖くなってきて両手で自分を抱きしめていた。


「チー」


そんな私を翔くんは優しく抱きしめてくれた。
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