今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
なにしろ彼は優秀だから、伊集院家のお父さんも会社の跡を継がせたいらしい。


そういう事情で、こうやって送迎の車をよこしてくれたのかも。


どうやら兄は見た目だけじゃなくて本物の王子様のようだ。


「私はいいから、翔くん乗って」


「まさか、そんなわけにはいかないよ。俺もチーと一緒に電車で行くよ。むしろ二人きりがいい」


「でも、矢代さん諦めそうにないよ」


「確かにあの人しつこいからな」


私と兄がこそこそ話していたら矢代さんが割って入ってきた。


「お嬢様、勿論一緒にお送りいたしますよ。さあどうぞ」


お嬢様って私のことだろうか?なんだかしっくりこなくて変な感じだけど。


「えっ、私もいいんですか?」


「はい、どうぞどうぞ。ぜひうちの坊ちゃんと一緒にお乗りください」


兄と顔を見合わせて苦笑いした。



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