今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うん、性格や雰囲気は全然似てないんだけどね」


どうしたんだろう、話せば話すほど兄の表情が暗くなっていく。


西原くんの話題を口に出すのが完全に失敗だったとようやく気が付いた。


「あ、でも翔くんの方がずっとずっとカッコいいよ」


「そう……」


「……」


「……」


いつのまにか、2人とも黙り込んでしまった。


だけど、沈黙が重苦しかったのでしばらくして私から口をひらいた。


「そ、そうだ。今日の晩御飯は私も手伝うからね、あっ、お腹すいてきちゃったかも。わーお腹鳴っちゃいそう」


「……」


「翔くん、私のお腹が鳴っちゃっても笑わないでね。あ、そうそう洗濯物は今日私が畳むね。それから」


「……」


彼は何か考えごとをしているみたいで、ぼんやりしていて黙ったままだ。


気まずさをごまかしたくて家に着くまでに私は一人でしゃべり続けた。


「翔くん、あ、あの帰ったらまたお部屋に行ってもいい?」


「……えっ、ああうん、いいよ」


家に着く直前にようやく返事をしてくれたので少しホッとした。


だけどやはりどこか頼り無い表情だったのが気がかりだった。
< 86 / 443 >

この作品をシェア

pagetop