今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「こっち向いてるから着替えて」


「ノックくらいしろっていつも言ってるだろ。まったくチーは」


「ごめん、でもいいでしょ、兄妹なんだから。べつに」


「……」


シーンと部屋の中が静まりかえる。
なんだろう、この沈黙は。


「翔くん?」


「そうだな」


唸るような低い声。


あれもしかして怒ってる?


まさかね、優しい兄はこんなことくらいで怒ったりしない。


それからまた少しの沈黙の後、先に口を開いたのは彼だった。


「なあ、だったらこっちを見れば?」


「え」


「見てもいいよ」


うっ、翔くんどうしてそんなこと言うんだろう。


私をからかってるのかな。


だって今振り返ったら……。


ところでいま、どこまで脱いでるんだろうか。


「見ない」


ポンちゃんをぎゅうっと抱きしめながらそう言った。
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