今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
しょっちゅうじゃないけど、私から翔くんに抱きつくことはたまにある。


それは、じゃれあいみたいな軽いものだし、抱きつくのと抱きつかれるのでは大違いだよ。


それに今日の翔くんはどこか違う。


上手く説明はできないけど、苛立っているみたいでちょっと怖い。


もしかしたら、私がさっき西原くんの話ばかりしたから?


「チー、俺を見ろよ」


そう言って私を後ろから覗きこんできた。  


彼の冷たい視線とぶつかると身体が石になったみたいに動けなくなる。


グラッと視界が揺れて天井が目に飛びこんできた。


「わっ、ちょっと……」


抱きしめられたまま、ベッドに押し倒されてしまった。


兄は私に覆い被さり、無表情でこっちを見つめている。


怖いって気持ちと同時に胸の奥が大きく跳ねる。


これじゃあまるでお兄ちゃんていうよりも。


「……ンッ」


彼の長い指が私の唇に触れる。


「ア……」


ツンツンって何度も指の腹で唇に触れて……。
 

ああどうしよう、ちょっとカサカサしてるかも、恥ずかしい。


リップクリームを塗ろうって思ってたのに忘れてた。
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