【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。
榎本さんはメモにA・B・Cと書き出すと、私に見せた。
「まずはA、A軍は五十嵐さんみたいな親が会社経営している社長令嬢や令息、政治家の子がいるの。倉橋くんも飯嶋くんもAだよ」
彼女はまたBと書かれた横にはまぁまぁお金持ちと書いた。
「Bは、親が大企業勤めしていて役職に就いてる子たち」
私はメモに【榎本さんは?】と書いて問いかける。
「私はBかな。親が子会社の社長なの……でね、Cが一般生徒。ほとんどが奨学生制度で通ってる」
そんな、軍で分けられてるのか……学校、すごい。
『何話してんだよ』
哉斗くんは、近づいてきて私の右隣に立った。
「あ、倉橋くん。終わったの? 女の子たちのリップサービス」
「あいつらが勝手にくるんだ。『大丈夫だった? 美央ちゃん』」
「大丈夫、じゃないよ! 倉橋くんががっしりと守らないから、女子たちに押されてよろけちゃってたんだから。倉橋くんがそんなんじゃ、私がもらっちゃうよ」
「は? あげねーよ」
何かを言ったと同時に哉斗くんの左手が肩に触れるとグッと引き寄せた。
「あら、残念。じゃあ五十嵐さん、またね」
榎本さんはゆっくりそう言うとお辞儀をして先に教室に入って行ってしまった。
周りを見ると、皆がジロジロこちらを見ているのに気づく。そ、そういえば……! 今、さりげなく哉斗くんに後ろから抱きしめられてるっ!
思い出した瞬間、急に恥ずかしくなって哉斗くんの腕を叩いて離してもらえるように抵抗したけどしばらく離してくれなかった。