【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。


 食堂に着くと、日当たりのいい窓際のカウンター席に座る。

『美央はいつものでいい?』

 私は『うん』と頷き、手話で伝える。

『大丈夫』

『了解、少し待ってて』

 哉斗くんは、私に微笑むと食券機のある方に向かって行った。彼が私から離れると冷たい視線を感じる。私は耳が聞こえない分、そういうことが敏感らしい……。理由は簡単。私が哉斗くんの婚約者だからだ。
 まあ、仕方ないと思うようにしている。哉斗くんは、とてつもなく人気があるんだもん。

 沙知ちゃんには編入して日が経たないうちに『視線だけならいいけど、何かされたら言いなよ!』と言われたことがある。彼女は言わなかったけど、私は耳が聞こえないのに色々持っていることからの妬みなんだと思う。

『お待たせ』

『ありがとう』

 彼は、私のサラダうどんセットと彼の頼んだ麻婆豆腐セットが乗っているトレーをカウンターのテーブルに置いた。辛いものは今、哉斗くんのマイブームらしくほぼ毎日麻婆豆腐セットだ……辛そう。
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