【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。
『美央、俺もお菓子作ったんだよ? 見て』
哉斗くんが紙袋から箱を取り出すとそこにはカットされているシフォンケーキが入っていた。それにビニールでラッピングされたパウンドケーキも出て来る。
『食べさせてあげる』
た、食べさせる……? え、誰に何を食べさせるの?
『口開けて、美央』
『恥ずかしいし、自分で食べられるよ』
『いいから。俺がしたいんだ』
哉斗くんは、私の口にシフォンケーキを入れるとニコニコした。モグモグと口を動かすと、ふわふわで甘さ控えめでとても美味しい。
『どう? 美味しい?』
『美味しいよ。すっごく』
『料理人に習ったんだ。美央に食べて欲しくて』
モグモグと食べながらすごく幸せな気持ちになる。哉斗くんが優しくて、私のためにしてくれるのが分かって本当にうれしい。
『ありがとう、それも食べたいな』
袋に入っているパウンドケーキを指さすと、『了解』と手話で言って袋を開けてくれた。それはチョコ味でとても美味しかった。
お菓子を食べていると駅に到着し、新幹線の改札へと向かう。
『はぐれるといけないし、手を繋ごう。握ってて』
『ありがとう、哉斗くん。よろしくお願いします』
私は、哉斗くんの手をぎゅっと繋いだ。新幹線に乗り込むまで手は繋いだままだった。