【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。
「本当にキス、する?」
そう言った哉斗くんは私の右頬に手を添えると顔が近づき……キスされるかも、と思って目を閉じた。けどいつまで経ってもされなくて目を開く。
すると、目の前にはお兄ちゃんがいて哉斗くんに何か言っている。
『お兄ちゃん、お帰りなさい』
『ただいま、美央〜今日も可愛いな』
そう言うと哉斗くんを差し置いて私に抱きついてきた。
お兄ちゃんとは、前までは顔を合わせても軽く無視をされていたんだけど……突然フレンドリーになって、いつの間にか『可愛い可愛い』って連呼するようになった。哉斗くんにシスコンだって言われるほど……
『美央の好きなプリンを買ってきたんだよ。一緒に食べよう』
『今は、哉斗くんいるから後で食べる。今はだめ』
『こいつのことはいいよ』
『いやだよ、なに言ってんの! 今から哉斗くんが持ってきてくれた焼き菓子食べるんだから、邪魔しないで!』
私がそう言い放つとお兄ちゃんはいかにもショックを受けたような表情を見せて泣きそうになりながら、哉斗くんに何かを呟き部屋から出て行ってしまった。
『良かったの? 央翔さん、すごく悲しそうだったけど』
『いいの。お兄ちゃん、なんか哉斗くんのこと敵のように接するよね……ごめんね』
哉斗くんは『全然大丈夫だよ』と手話で言うと、お兄ちゃんが持ってきてくれたプリンと哉斗くんの持ってきてくれたマフィンを一緒に食べた。