【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。
お兄ちゃんにも挨拶するが、こちらを向いてくれなくて上手く挨拶が出来なかった。お兄ちゃんは私のこと興味がないし、指文字を知らないからメモするのが億劫なんだと思う。
とにかくお話をしてくれないし目も合わせてくれない。
『みお、今日はお客様が来るからね』
お父様は、視線を合わせると私の顔を見てゆっくりと口を動かす。ゆっくりなら私も言っていることが分かる。だけど、誰が来るのかそれが知りたいんだけどなぁ。
【お客様……? それは誰ですか?】
『ひみつだよ。楽しみにしてて』
楽しみに、って。私、家族や家庭教師の天野先生以外で話したことないから怖くて聞いているのになぁ。
もしかしたら、私のこと馬鹿にするかもしれないじゃない。私は黙って目線は合わせないで下でも向いていよう。