【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。


 この人、早くて口の動きが見れなくて、何を言ってるのか全く読み取れない。
 だけど、お父様と男性は話を続けている。お母さんも向かいに座る女性と話していて……私は、置いてけぼりだ。

 どうすればいいんだろう……。こんなこと初めてで、怖くて仕方ない。頑張って聞き取ろうとしたけど分からなくてやっぱり、俯いてしまった。
 すると、肩をトントンとたたかれて顔を上げると部屋には私と男の子しかいなかった。何も話をしなかったし私、置いて行かれたのかもしれない……。

「俺の名前、倉橋哉斗(くらはし かなと)だ」

 くらはし、かなと……? ゆっくり、話してくれた?
 私が耳、聞こえないこと知ってるの?

「みお、って呼んでいい?」

 い、いきなり呼び捨て!? そういうものなのだろうか。家族にしか呼ばれたことなくてバクバクと心臓が音を立てる。


< 6 / 181 >

この作品をシェア

pagetop