私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない



「今、買った本がそれだから。
 俺が買うとき、ちょうど一冊しかなくて」


『本を貸す』
 松尾の言葉に驚いた。

 それもあるけれど。
 松尾が先に買ったもの。
 私が先に読むなんて。


「いいよ、悪いから」


「別に悪くないよ」


 松尾は優しい、本当に。


「松尾がせっかく買ったんだから」


「そんなこと関係ないよ。
 たまたま先に買うことができただけで」


 気遣いのある松尾。


「それに」

< 53 / 107 >

この作品をシェア

pagetop