私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない



 声がする方を振り返ると。
 注文を受けてくれた店員さんが、こちらに向かってくる。


 何か忘れ物をしてしまったのか。

 そう思っている間に、店員さんが俺の目の前に。


「申し訳ありません、呼び止めてしまいまして。
 お客様は店長……遥稀さんの同級生の方ですよね?」


 え?

 俺のことを知っている?


「そうですけど……?」


「突然すみません。
 前に、お客様と遥稀さんが一緒にいるところを見かけたものですから」


「そうだったんですね」


 店員さん、昨日とは言っていなかったな。

 ということは。
 合コンの日のことだろうか。


「そのことを遥稀さんに話してみました。
 そうしたら偶然再会した同級生だと言っていたので」


 やっぱり。
 店員さんが見かけたのは、あの日。


「申し遅れました。
 僕は政輝亜南と申します」


 丁寧な印象。

 客相手だからかな?


「僕は松尾聖志と申します」


「……あの……
 初対面の方に、このようなことをお訊ねするのは、あれなのですが……」


 すごく訊きづらそうにしている。


 よほど訊きづらいことなのだろうか。


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