お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「あ!でもそのまえに、お父さんに見せてくる!」
「……やめろよ、恥ずかしいから」
「じまんするの!」
わたしは碧くんがかいてくれた絵を持って。
自分の部屋を飛び出して、走ってお父さんの部屋へと向かう。
すると、わたしの後を追ってくる碧くん。
彼はものすごい早さでわたしに追いついて、手に持ったものを取ろうとする。
縁側ではじまる攻防戦。
必死に背伸びをして、手をまっすぐに上げて絵を取られないように頑張るが、碧くんも同じくらいの背丈のため手が届きそう。
「組長に見せるのはだめだって」
「やだ!じまんしたいの!」
「離せよチビ」
「これはもうわたしのだよ!碧くんは部屋にもどってて!」
取られないように必死になっていれば……突然、強い風が吹いた。
指先で少し挟むように持っていた、一枚の紙。
それは簡単に飛ばされてしまって……。
ふわりふわりと風に乗って空高く飛んでいき、庭にある大きな木にひっかかる。
……とりあえず池に入ったり、家の外まで飛ばされなくてよかった。