お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
わたしは靴も履かずにその木のところへと向かい、すぐに登った。
木登りはわりと得意。
前はよく登っていたんだけど、お父さんに危ないからと言われて禁止されてしまったっけ。
「危ねぇよ!おりてこい!」
碧くんが下からわたしを呼ぶ。
だけどやめなかった。
せっかくかいてくれた絵を絶対になくしたくなかったから。
止まることなく登って、ひっかかってる絵に手を伸ばして。
手が届き、無事につかむことに成功。
よし、あとはおりるだけ。
そう思って下を見た瞬間。
あまりの高さにびっくりして、足がすくんだ。
そういえば、こんなに大きな木に登るのははじめて。
おりるときは絵を持っておりなくちゃいけないから、片方の手を思うように使えない。
おまけに風が強く吹いていて……木の上にいるのがすごく怖かった。
涙が目にたまって、ぽたぽたとこぼれ落ちる。
「ど、どうしよう碧くん……。おりるの怖い……」
「今だれか呼んできてやるから待ってろ!」
「行かないでよ……。碧くんいなくなったらやだ……」
「そんなこと言ったってだれか呼んでこねぇと!おまえ一生木の上にいることになるんだぞ!?」
「……いっしょう?」
ずっとこのまま、というのも考えると怖い。
わたし、もう木の上でしか生活できないのかな……。
そんなのやだよ。