お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
だめです、って!?
碧に渡すクッキーだけど、どこに持ってくの!?
また意地悪!?
「碧……っ!!」
わたしは碧のあとを追う。
どうせなら、自分から渡したい。
ちゃんと、仲直りしたい。
「お嬢が作ったクッキーなんてだれかが食べたらお腹壊しますよ」
「な!?」
また、なんて失礼なことを!
翔琉さんの指導のもと作ったからそんなことないのに!
……まぁ、まだ味見してなかったから絶対とはいえないけど。
「これは俺が責任をもって片付けておきます」
「返して……っ!」
片付ける、とは捨てるという意味かと思ってすぐにクッキーの小袋へと手を伸ばす。
が、碧はわたしが取れない位置まで高く上げると、ラッピングしていたリボンを解いて。
小袋の中からクッキーを1枚取り出すと、それを自分の口へと運んだ。
もぐもぐと口を動かす彼。
……本当に食べた。
ちゃんと渡したかったのに……。
「なんでそんなに意地悪ばっかりするの!?碧のバカ!!大っ嫌い!!」
こんなことを言いたかったわけじゃない。
でも、ついムカついて……そんな言葉が口から出てしまった。