お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「大丈夫です。骨は折れてませんよ」
声が耳に届くと、くっついていたおでこが離れて。
今度は、碧の鼻とわたしの鼻がくっついた。
今さらながら、碧と至近距離にいることにドキドキ。
よく考えれば、わたしは今……碧に、押し倒されている、わけで。
それを意識すればさらにドキドキと心臓が暴れだした。
っていう、いつどいてくれるの?
もう約束もしたし、わたしの上からどいてくれてもいいと思うんだけど……?
このままじゃ、わたしの心臓の音が碧に聞こえちゃうよ……!
「あ、碧、あの、わたし、そろそろ自分の部屋に戻る……」
少し強く碧の胸を押す。
すると、彼は。
「お嬢、俺は1個だけどうしても許せないことがあります」
じっとわたしを見つめてくる。
1個だけ、どうしても許せないこと……?
「え?」
それはなんだろうと考えようとした、その時。
碧は……わたしの頬を、ぱくっと優しく食んだ。
な、な、な、なに!?
急に食べられた!?
優しく食まれたから痛みはなく。
またわたしを見つめる彼。
「この餅ほっぺは俺のです。なにほかの男に2回もキスされてるんですか」