お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「大丈夫です。骨は折れてませんよ」


声が耳に届くと、くっついていたおでこが離れて。
今度は、碧の鼻とわたしの鼻がくっついた。


今さらながら、碧と至近距離にいることにドキドキ。
よく考えれば、わたしは今……碧に、押し倒されている、わけで。


それを意識すればさらにドキドキと心臓が暴れだした。


っていう、いつどいてくれるの?
もう約束もしたし、わたしの上からどいてくれてもいいと思うんだけど……?

このままじゃ、わたしの心臓の音が碧に聞こえちゃうよ……!


「あ、碧、あの、わたし、そろそろ自分の部屋に戻る……」


少し強く碧の胸を押す。
すると、彼は。


「お嬢、俺は1個だけどうしても許せないことがあります」


じっとわたしを見つめてくる。

1個だけ、どうしても許せないこと……?


「え?」


それはなんだろうと考えようとした、その時。
碧は……わたしの頬を、ぱくっと優しく食んだ。


な、な、な、なに!?
急に食べられた!?


優しく食まれたから痛みはなく。
またわたしを見つめる彼。


「この餅ほっぺは俺のです。なにほかの男に2回もキスされてるんですか」

< 126 / 431 >

この作品をシェア

pagetop