お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「あんまり隙があると俺がお嬢を食いますよ」
まっすぐに見つめられ、一瞬声が出なかった。
目の前の彼は、本気の目をしている。
……この言葉は冗談なんかじゃない。
心臓が、壊れそうだ。
ドキドキ鳴りすぎて、爆発しそう。
「もっと男に警戒してくださいね」
そんな声が耳に届いたあと。
碧はすぐにわたしから体を離して、腕を引っ張り起き上がらせてくれた。
「そういえば……クッキー食べてすみませんでした。これ、だれかにあげるやつだったんですよね?」
彼は手に持っていたクッキーの小袋を見て、急に正座。
ついさっきまでは本気の目をしていたのに、今は申しわけなさそうな表情に。
「……それ、碧にあげるやつだったんだよ」
「俺に、ですか?」
「うん」
うなずけば、ぱぁぁっと瞳を輝かせる彼。
なんか……嬉しそう?
コロコロ変わる表情は、なんだかすごく可愛い。