お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


***


碧くんが家に来て1ヶ月が過ぎた頃。

わたしのお母さんは……ある日突然亡くなった。


ガンだったらしい。
かなり進行していたが、それでも諦めずに治療して……帰らぬ人となってしまった。


大好きだったお母さん。
幼いながらにもう二度と会えないことを理解して、すごく泣いた。


そんな時に、そばにいてくれたのは碧くん。
ずっと泣いてばかりのわたしの隣にいてくれて、背中をさすったり、抱きしめてくれたり。夜も一緒にいて、隣で寝てくれた。





そして、満月の夜に彼は誓う。


「これからは俺がずっと茉白のそばにいてやるから、もう泣くなよ」


寝る前も、お母さんのことを思い出しては泣いてしまうわたしに彼は言った。


はじめて“茉白”って名前で呼んでくれた日。
いつもはわたしのことを“おまえ”って呼ぶのに。


「……ほんと?碧くん、ずっとそばにいてくれる?お母さんみたいにいなくならない?」
「いなくならねぇよ」


「ぜったいだよ?」
「あぁ」


その誓いをして、わたしは眠りについた。
次の日から、碧くんが変わってしまうとは知らずに。

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