お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「美味しいなら、飾らないでちゃんと食べてね」
「……1枚だけ、飾るのはだめですか?」
飾るなんてことをしたら、カビが生えそうだから言ったんだけど……碧はお願いするようにこっちを見てくる。
そんなに飾りたいのだろうか。
まぁ、そんな顔をしてもだめなものはだめなんだけど。
「だめ。ちゃんと食べてね」
「……お嬢がそう言うなら、飾りたい気持ちをおさえます。大切に食べますね」
少し寂しそうに返事をした彼。
今すぐは無理だと思うけど……1人でお菓子を作れるようになりたい、と強く思った。
そして、今度は1人で作ったものを碧にあげて、喜んでもらえたらいいなぁ。
先は遠いだろうけど、少しずつ頑張ろう。
そう思って、自分の部屋へと戻った。