お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
一緒に行くのは、寂しいからとかじゃない。
ぜんぜん、寂しいからとかじゃなくて……。
碧がいなかったら、話し相手がいなくて暇になってしまうから。
た、たまには図書室に行って、本でも読もうかなって思っただけ。本当にそれだけだ。
「お嬢、ほんと可愛いですね」
図書室に向かいながら、碧はそんなことを言ってくる。
な、な、なんだ、急に……。
可愛いって……!!
「……帰ったら勉強しようね」
なんて返したらいいのかわからず、小さな声を出した。
「お嬢。俺はさっきも言った通り、お嬢に勉強を教えてもらうのはすごく嬉しいです。でも……大っ嫌いな勉強を頑張って、追試を乗り越えるためにはなにかご褒美がないとやっていけません」
じっと隣から感じる視線。
これは……確実に、ご褒美を要求されている。
まぁ、それで勉強を頑張ってくれるのであれば、いいか。
わたしにできる範囲のことなら、要求を呑もう。
「……なにがほしいの?」
ちらりと目を合わせると。
「俺が全教科、追試で1発合格したら……好きなところにキスさせてください」
耳に届いた言葉。