お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
す、好きなところに、キス!?
好きなところって、どこ!?
ほっぺ!?
でも、ほっぺならもうキスされたことあるし、この間なんて甘噛みされたっけ……!
ま、まさか!
口じゃないよね!?
そもそも、そんなものがご褒美になるのか……。
いろいろ聞きたいことはあったけど、「いいですか?」とまっすぐ見てくるから。
「あ、碧がそのご褒美でいいんだったら……いいよ」
そう返してしまったわたし。
心臓がドキドキして、碧の目を見て言えなかった。
……なんでそれを要求してくるのか、碧がなにを考えてるのかさっぱりわからない。
下を向いてスタスタと少し早歩きで歩く。
碧より数歩前を歩いていたところで、視界に色違いのサンダルが見えて。
慌てて立ち止まった。
あ、危ない危ない……前を見ないとだれかにぶつかっちゃうところだよ。
「──ねぇ、少しいいかな?」
避けて通ろうとすれば、上から降ってくる声。
わたしはその声に顔を上げた。