お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
“俺の”と強調して、わたしをさらに引き寄せる。
な、なに、“俺の”って!?
しかもなんで急に……健くんが出てくるの!?
それを聞いた先輩は、ほかになにも言わず。
この場を去っていく。
「あの人、よくないニオイがします。一応用心してください」
遠ざかる後ろ姿を見送ったあとに、碧はつぶやくように言った。
よくないニオイ?
そんなことに気づくなんて……なんか、犬みたい?
「ほんと、あの猿はお嬢をめんどうなことに巻き込んで……。
あの猿の口から早く誤解を解いてもらいましょう」
彼は、はぁ……とため息をひとつ。
さっきから疑問に思っていたけれど。
なんで健くんが出てくるんだろう。
「碧、どうして健くんが話にでてくるの……?」
気になったことを聞いてみる。
そうすると、碧は……少し驚いた表情をして、後にため息をもうひとつ。
「……お嬢は3歩歩けばすぐに忘れるニワトリだったんですね」
ニワトリなんて、失礼な……っ!