お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


***


「里古さん、俺も手伝います」
「え!?こ、こっちは大丈夫ですよ……!」


「手伝いますよ。今だれも本借りに来る人いないので。もしだれか来たら、すぐあっちに戻ります」
「あ……じゃ、じゃあ、お願いします」


「はい」


図書室にて。
聞こえてくる2人の声。


2人の声、というのは碧と……メガネをかけたおさげの女の子。
なんと、おさげの女の子は、碧と一緒の図書委員だった。クラスで2人しかいないという、図書委員。


ついさっきまでカウンターで碧が本の貸出手続きをしていて、おさげの女の子が返却された本を1人で棚に戻していた、のに。


図書室に碧とおさげの女の子、わたしの3人だけになると碧は立ち上がって、おさげの女の子のほうの仕事を手伝いに行った。


わたしは座って、図書室にあった歴史のマンガ本を読んでいようと思っていたけれど……ぜんぜん集中できない。


碧がまたあの子を名前で呼ぶから、心が穏やかではなくなって、2人の会話にばかり耳を傾けてしまう。

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