お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「里古さん、この間の体育の時はありがとうございました。ちゃんとお礼をしていなくてすみません」
「あ、いえ!お気になさらず!困った時はお互い様ですよ!わたしも、小鳥遊くんに以前傘をお借りしましたし!
そ、それより、小鳥遊くんはもう大丈夫ですか?鼻の骨、実は折れてたりとか……」
「ぜんぜん大丈夫です。鼻曲がってないし、もう痛くないので」
「そうなんですね!それはよかったです!」
なんだか、仲良さそうに話している2人。
おさげの女の子は、特にさっきのこと……碧がわたしのことを“お嬢”と呼んでいたことや、手にキスをしていたことを気にしていなさそう。
さっきのは聞こえていなかった、のだろうか。
本当はなにも見てない?
そこまで大きい声というわけでもなかったし、聞こえなかったという可能性もある。
それに、メガネをかけていてもちゃんと見えなかったという可能性ももちろんあるわけで。
このことに関しては、とにかく気にしないようにしよう。
変に行動すれば、逆に怪しまれちゃうもんね。