お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「──好きなんですか?」


ふと女の子のそんな声が聞こえてきて、ぱっと顔を上げる。


え?
す、好き?
……好き!?


なにが!?
もしかして、わたしが考え事してるうちに……告白してた!?


碧のこと好きなの!?
碧はかっこいいから好きになるのも無理もないけど……っ!!


ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。


碧はなんて言うのか。
なんて答えてしまうのか……。


立ち上がりそうな気持ちをおさえていれば。






「正直に言うと、読書はあまり好きってわけじゃないです」


次に耳に届いた碧の声。


え?
ど、読書……?


「小鳥遊くん、やっぱり体動かすほうが好きなんですか?」
「運動は好きですね」


「やっぱりそうなんですね。この間の体育ですごい活躍してましたもん!」
「でも俺は、体動かすこと以外はだめだめですよ」


「だれにでも得意不得意はあります!得意なことがあることは、とっても素敵なことだと思いますよ!」


会話の続きを聞いて、ほっとひと安心。


……びっくりした。
読書が好きか、聞いてたのか。告白かと思っちゃったよ……。

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