お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「ありがとう」
「では、俺は戻りますのでいい子に読書しててくださいね」
それだけ言うと彼はすぐに立ち上がる。
行っちゃう……っ!
「鷹樹さん?」
気づけば手が動いてい、碧の学ランの袖をつかんでいた。
行かないでほしかったから、つい。
またあの子と仲良く話してほしくなかったから……。
「やっぱり寂しいんですか?」
目の前の彼は口角を上げる。
どうやら、寂しくて引き止めたと思われているようだ。
「さ、寂しくなんか……っ」
「寂しがり屋なのは知ってますよ。そんなに寂しいなら、寂しがり屋の鷹樹さんも図書委員の仕事一緒にやります?」
“寂しがり屋”と“寂しい”を少し強調して言われる。
バカにされているみたいだけど「……やる」とうなずいた。
仕事を一緒にやれば、2人がこれ以上仲良くなるのを阻止することができると思ったから。
「ほんとにやるんですか?」
わたしの返事を聞いた碧は確認のために聞いてくる。
自分から誘ったくせに。