お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


だから、気にしないようにして過ごすことにした。


まぁ、そうしていたら、彼はいつの間にかいろんなことをやっていたわけだけど。


小学生になった頃に碧は、柔道、剣道、合気道、空手、たくさんの武道を習っていた。
……学校にあまり行かずに。


碧に「学校行こうよ」と言っても聞いてもらえず。
彼は武道場に、わたしは学校に通う日々。


わたしには友だちもできて、楽しく過ごしていたが……その日々はあっという間に終わる。


「ましろちゃんとはなかよくしちゃダメだって」

「わたしも、お母さんがそう言ってたから……」


まわりは、わたしの家が普通じゃないということに気づいたんだ。


登下校は黒塗りの車、授業参観にはスーツを着たどう見ても普通じゃない人が来ていたんだから、気づかれても仕方ないと今では思う。


やがて友だちはいなくなり、学校ではひとりぼっちになったわたし。


それでも……ひとりでも、学校に通った。
碧が武道を頑張っているなら、わたしもなにか頑張りたいと思ったから。

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