お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


わたしがまだ知らない碧を知ろうと、彼を観察し始めて約2ヶ月。


残念ながら、新しい収穫はまだひとつもない。


まず、碧はびっくりするほどわたしの前で若頭としての顔を見せないんだ。
それは、わざとなのか無意識にそうしているのか……。


碧と翔琉さんでの会話でも、わたしの前で組関係のことは絶対に話さないし、なにか指示したりもしない。
組員にこうして碧が呼ばれたら、わたしに聞こえないように部屋を離れて話に行く。


だから、まだ知らない碧を知るためには積極的に動くしかない。


わたしがいなければ、若頭としての姿が出るわけで。
こうしてついて行けば、ほんの少しだけでも若頭としての碧の姿が見られるだろう。


『ストーカーのようについてきて、時には触れて、俺の隅々まで観察していいですから』

以前、碧本人がそう言っていたんだし、ストーカーしてもいいよね。






「──がありまして」


話し声が耳に届いて、ピタリと足を止めた。

碧の声もするけれど、2人がなにを言っているのかはここからじゃよく聞き取れない。

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