お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
お、起きてた!?
びっくりして、びっくりしすぎて、後ろへと下がればベッドから滑り落ちそうになる。
「わっ」
後ろに重心がいって体が倒れそうになる、その直前──。
碧は素早く起き上がり、わたしの腰へと手をまわすと自分のほうへと引き寄せた。
次に瞬きした時には、彼と密着していた体。
ゼロ距離だから、ダイレクトに鼻腔に届く碧のいい匂い。
心臓がさらにドキドキと加速して、壊れてしまいそう。
「お嬢、大丈夫ですか?」
「う、うん……あ、あ、ありがと」
ドキドキしすぎて上手く返事ができない。
碧はすぐにわたしを離すと、枕元に置いておいた自由帳に気づいて、それに手を伸ばす。
表紙をめくって1ページ目、わたしがさっき書いた碧の後ろ姿の絵。
「なにか描いてるなと思ったら……絵日記、ですか?」
「うん。碧の観察しようと思って……」
って、絵を描いている時から碧は起きてたってこと?
ずっと寝てるのかと思ってたのに……。
「相変わらず下手な絵ですね。高校生にもなって絵日記を描こうと思うその幼稚な発想、俺は好きですよ」
自由帳を見て、ふっと笑われる。