お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
わたしはすぐに碧の部屋へと向かった。
そして、部屋の襖を開けた時に目に入ったのは──。
彼の大きな背中の、鷹の刺青。
ちょうど着替え途中だったみたいで、たまたまそれを見て、びっくりしすぎて声が出なかった。
いつからそれを背中に入れていたのか。
いつから組に入っていたのか。
この家にいたら組に入る可能性が高いということはわかっていたけれど、なんでわたしに言わなかったのか。
「お嬢、覗きに来たんですか?」
彼は特に慌てる様子もなく、普通に声をかけてくる。
「ち、ちがう!そ、その背中の……」
「あぁ、これですか?別に隠してたわけじゃないですよ。ただ言う必要もないかーって思ったから言わなかっただけで」
「言ってよ!!」
「そんなに知りたいですか?俺のこと」
「知りたいに決まってるじゃん、バカ!!」
ムカついたから、近くにあったクッションを投げて走って逃げた。
ムカついたのは、自分のことはなにも言わない碧と、近くにいたのに気づかなかったわたし自身。