お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
な、舐めた!?
わ、わたしの口についてた……生クリームなのに!
っていうかダメ人間って!
失礼すぎじゃ!?
「バカ」
ひと言だけ返して、黙々とパンケーキを口に運ぶ。
碧はただ微笑んで、彼も食べる手をすすめた。
──他愛のない話をしながら食べて、先に食べ終わったわたしは碧が今日頼んだものを全てメモして、彼が食べている姿をスケッチ。
「お嬢、その自由帳俺にくれませんか?」
描いている途中で、そんな声が聞こえてきて手を止める。
「え?あげないよ?碧の観察記録だもん」
「そこをなんとか、もらえませんか?」
なんだ、急に。
自分の観察記録が欲しくなったの?
っていうか……。
「碧、わたしの絵、下手って言ってたよね?それが欲しいの?」
わたしは忘れないんだから。
『相変わらず下手な絵ですね。高校生にもなって絵日記を描こうと思うその幼稚な発想、俺は好きですよ』
って自由帳に描いた絵を見て言われたのを!