お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「お嬢の絵は下手ですけど、俺は好きですよ。下手でも一生懸命に俺を描いてくれてるなんて、それはもう喉から手が出るほど欲しいです。
だからどうか俺にください。一生大切にします」
彼は飲み物を喉へと流し込んで、じっと見てくる。
下手って2回も言われた。
バカにしてるのかよくわからない。
「あ、あげないもんね」
これはせっかく書いた記録。
ちゃんと残しておかないと。
「……いちご大福3個追加でどうでしょうか」
「いいでしょう!」
そんな声が聞こえてきて、一瞬で気持ちが揺らぎ……うなずいた。
だって、いちご大福3個も追加なんてうなずかずにはいられない。
「ありがとうございます」
碧はにこりと笑う。
「でも渡すのは今日1日観察して、それを全部描いてからね」
「わかりました」
それから渡す前に、自由帳を全ページ写真におさめておこう。
せっかくの記録だから、せめて写真として残さないとね。