お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
そんな普通じゃない家で、彼と出会ったのだった。
5歳の頃──。
お母さんは体が弱く、病院に長期間入院していて、1人で遊ぶことが多くなったわたし。
この日も、1人でお絵かきをして遊んでいた。
「茉白、こっちへおいで。新しいお友だちを連れてきたよ」
お父さんに呼ばれて玄関へと行けば、そこにいたのは。
スーツを着た、同じくらいの背丈の男の子。
きれいな黒髪に、切れ長の目。
小さな体なのにスーツが似合っていて、すごくキラキラして見えて。
……一瞬で、恋に落ちた。
これがわたしのはじめての恋。
この日のことをわたしはずっと忘れない。
「彼は洋二(ようじ)の息子、小鳥遊 碧(たかなし あおい)くん。茉白と同じ5歳だよ。
今日からここで暮らすから、仲良くしてあげてね」
お父さんがそう言うと、隣の男の子──碧くんは「よろしくおねがいします」とぺこりと頭を下げた。
洋二さんとは、お父さんの補佐をやってる人。
息子がいるけどワケあって離れて暮らしている、と前に聞いていたわたし。
碧くんと仲良くなれるといいなぁ!
「たかぎ ましろです!こちらこそよろしくおねがいします!」
ドキドキしながらわたしもぺこりと頭を下げて、挨拶を返す。