お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
ついこの言葉を選んでしまったけど、すぐに後悔。
この言葉もだめだった。
わたしが碧を好きだから気にしてる、って言ってるようなものでは!?
もっとほかの言葉があったはずなのに!
「わ、わたしは幼なじみとして碧のぜんぶを知りたいの……!
ほ、ほら、碧って若頭の姿をわたしに見せようとしないし、自分のことは自分で言わないで秘密にすることが多いから……気になって!幼なじみとして!ただ気になっただけだよ!」
“幼なじみとして”を強く強調。
どうか、怪しまれませんように……と強く願って、緊張しながらお父さんの次の言葉を待てば。
「碧に彼女なんていないと思うけどなぁ」
確かに、耳に届いた声。
「ほんと!?」
ぱっと顔を上げて、お父さんを見る。
「あいつは明るいうちは茉白と一緒にいるし、それ以外で外出するのは組関係でのことだけだろう。組員からもそんな噂話聞いたこともないし、実際に女の影を見たこともないような」
その言葉に、安心感が広がっていく。
お父さんは組のことを1番よくわかっているから、そう言うんだったら、碧に彼女がいないという可能性がものすごく高いということ。