お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
“好きな男”
で真っ先に思い浮かぶのは碧の顔で。
熱くなっていく顔。
うぅ……。
こうなったら、もういいや……!
「す、好きな人ならもういるもんっ!!」
声を出すのと同時、勢いよく立ち上がる。
相手がだれだか言わなければ、バレなければもういいや……と少しヤケになって言ってしまった。
これはお父さんしか聞いてない、と思ったんだけど……。
ほかの人に、聞かれているなんて。
ぱさっとなにかが落ちる音が聞こえてきて、音のしたほうへと目を向ければ──そこにいた、碧。
落ちたのは、ひざ掛け。
碧は少し離れたところでピタリと足をとめて、わたしを見て驚いた表情をする。
あ、碧!?
起きてたの!?
っていうか、今の、聞いてた……!?
碧は数秒間その場に動きを停止して。
「お嬢!!今の、本当ですか!?」
わたしのもとまで走ってきて、ガシッと両肩をつかんだ。