お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「別に……いいけど」


そう返事をすれば、

「昨日のことといい、いろいろありがとね」

と健くんは笑顔に。


……まっ黒焦げのカップケーキで喜ぶ人がいるなんて、珍しいもんだ。


それから、“昨日のこと”で思い出すのは、碧と出かけている時に健くんと会ったこと。
昨日のことって、なんのお礼だろうか。


「茉白ちゃんが俺のこと“友だち”って言ってかばってくれたこと、すごく嬉しかったんだよね。おかげで俺は海に沈められたりとかされなかったし、死なずにすんだよ」


なんのお礼だか、次の言葉でわかった。
碧が健くんまで片づけそうになった時、かばったあのことだ。


「健くんって、なんかすごいよね。怒った碧を煽るなんて、命知らずですごいっていうか……。っていうか、わたしたちの家のこと知りながら普通に関わろうとすること自体すごいよ」
「わーい。茉白ちゃんに褒められた」


健くんはやっぱり嬉しそうに笑う。

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