お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
まぁ、今はそんなことよりも気にするのは、この髪色のこと。
「今すぐ黒髪にしないと!髪色戻しはある!?」
「ないです。だからこれで学校に行きます」
「だめ!わたし今からコンビニで髪色戻し買ってくるから、碧は制服に着替えてて!」
家からコンビニまで、走ればだいたい15分。
時間に余裕を持って学校に行きたくて早起きしたから、まだ時間はある。
すぐに部屋を出ようとした、その時に。
パシッと手首をつかまれて、引き止められた。
「な、なにす──」
「朝から騒がしくして、どうした?」
後ろを向いて声を出した瞬間、わたしの声はある人物によって遮られる。
声のしたほうへと目を向ければ、部屋の中を覗いていた金髪の男性──若頭補佐の、中条 翔琉(なかじょう かける)さん。
翔琉さんは10歳年上で、頼れるお兄さん的存在。
「翔琉さん!碧が急に金髪にしてて!高校では悪目立ちしたくないのにどうしよう……!」
必死にそう言えば、翔琉さんは。
「俺の部屋に髪色戻しあるんで、それ使ってください。今持ってきますね」
まさかの。
救世主……!