お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


な、なんだ、急に!
なにか急用!?


なにがあったのかはわからないけど、すごく久しぶりに名前で呼んでもらえた。
どんなに『名前で呼んで!』って言っても聞いてもらえなかったのに……。


本当に、どうしたんだろう。
名前で呼んでもらえたのは嬉しいけど……!


碧に手を引かれるまま歩いて、連れてこられたのは屋上。


パタン、とドアを閉めると碧は壁にわたしを押しつけた。
それからわたしを逃がさないように頬の横に手をついて、距離を縮めると。






「好きな人って、あいつ?」



次に耳に届いた声は少し低く。
碧の表情は、なんだか怒っているような……不機嫌そうな表情。


「!?」
「おまえの好きな人ってあいつ?」


碧が敬語を使わない。
それも久しぶりすぎて、びっくりで……。


驚いてなにも答えられずにいれば、碧はさらに近づいてくる。

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