お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
ドキドキと加速する心臓。
下を向いて目を逸らせば、碧の手がわたしの顎に添えられて。
ぐいっと持ち上げられ、碧と再び目が合った。
「答えろよ」
なんで……碧がそんなに気にするの?
そんな、無理やり聞き出そうとするほど気になるの?
なんか……変に期待してしまいそう。
って、だめだめ!
自分のいいほうに考えちゃだめだ!
「秘密っ!」
大きな声で返した。
それを聞いた彼は、さらに不機嫌そうな表情。
「なんで言わねぇんだよ」
「い、言いたくないからっ!」
「言えよ」
「なんで言わなくちゃいけないの!碧だって、キスした女性のこととか言わないことたくさんあるくせに!」
勢いで言えば、碧とあの女性のキスシーンを思い出してズキリと胸が痛む。
あの女性は碧の彼女なのか、そうでないのか……本人の口からちゃんと聞きたいけど、聞きたくない。
本当の本当に碧の彼女だった時のショックが大きいよ……。
碧から目を逸らせないでただ見つめていると、彼はゆっくり口を開いた。
「あの人は、たまに世話になってる情報屋の人」