お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
なんで、あんなことしたんだろう。
あのあとの彼はまたいつも通り。
また敬語で話して、わたしを“お嬢”と呼んで、いつも通りの碧だから考えれば考えるほどわからない。
「お嬢」
襖の向こうから聞こえてきた声。
それは、碧の声で。
現在、彼のことを考えていたところだから心臓が跳ねた。
「な、なに!?」
びっくりして思わず大きな声が出る。
「少しだけお時間いいですか?」
また襖の向こうから聞こえてくる声に、わたしは
「今着替え中だからちょっと待って……っ」
と返して。
慌ててセーラー服を着て、手ぐしで髪を整えた。
ど、どうしたんだろう。
なにか、話……?
「おはよ」
ドキドキしながら襖を開けると。
黒シャツ、黒いズボンと全身真っ黒コーデの碧の姿が。
シャツのボタンは上から2つほどあいていて、あいているシャツの間からはなんだか色気が出ている。
「こんな朝早くにすみません。お嬢を2日分補給しに来ました」
そんな声が耳に届いたすぐあと。
彼はわたしとの距離をつめると、背中に手をまわし……強く、抱きしめた。