お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「どーも」
一条組の若頭の人はそう返して、ほかにはなにも言わない。
奥にいる銀髪の男性──如月組の若頭はちらりと一瞬こちらを見るだけで、わたしに興味はなさそう。
「お嬢、ぜんぜん覚えなくていいんですが……こちらが一条組の若頭、一条暁(いちじょう あかつき)さん。あちらが如月組の若頭、如月 深行(きさらぎ みゆき)さんです」
代わりに教えてくれる碧。
わたしはもう一度ぺこりと頭を下げた。
……年上、なのかな。
2人は大人っぽく見えるから……って、碧もだけど。
「ちなみに2人は俺らよりひとつ年下なので、お嬢がそこまで気を使わなくて大丈夫です」
碧はそう付け足して、自分の耳を疑った。
「……えっ」
と、年上じゃない!?
年下なの!?
黒服を着ているからか、ぜんぜん同い年に見えない。
2人を見て驚いていれば、うしろの襖が開いて。
さらに、びっくり。
「早く終わったから少し休憩入れて、10分後に次はじめるぞ。他のやつにも連絡してきてくれ」
襖を開けて、顔を出したのはお父さん。