お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「わかりました。俺が連絡してきます」
碧は1番にそう返して、「お嬢も行きますよ」とわたしの手をひいて歩く。
な、なんか……普通に手、つながれてる。
別にいいんだけどね!?
簡単にドキドキさせられて、少し悔しい。
「お嬢、ずっと立ってて足疲れませんでした?個室を用意してもらったので、次はそこで休んでいてください」
足を進めながらそう言う碧。
「そんな個室とかいいのに……」
っていうか、いつの間に個室を用意してもらうように頼んだんだ……。
「俺がいない間は個室のほうが安全です。お嬢はちょろいので俺はいろいろ心配なんですよ」
「なっ!」
また、ちょろいって言った!
何回バカにすれば気がすむんだ……!
「一応うちの組員を見張りにつけますが、狼が来ても部屋に入れてはいけませんからね」
出発する前も、狼の群れに子羊がどうのとか言っていたけど……いったいなんなんだ。
「……そんな変な心配しなくていいのに」
「お嬢が可愛いから心配なんです」
さらっと言われた言葉。
「へ?」と間抜けな声が出た。