お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
碧が本気で言っているのかはわからないけれど、好きな人から“可愛い”と言われるのはやっぱり嬉しいもので。
手をつないでいることもあり、さらに体温が上昇して顔が熱くなる。
顔を冷ますためにつないでいない方の手でパタパタと仰げば、急に彼は足をとめて。
碧にぶつかる直前で、わたしも足をピタリととめた。
くるりとうしろを振り向く彼。
じっとわたしの顔を見ると、頬へと手を伸ばし……。
「……またそうやって可愛い顔しないでください。お嬢がそういう顔するから、俺の心配は消えないんです。
お嬢は元から可愛いですけど、そんな可愛い顔をほかの男が見たら、俺のライバルが増えることまちがいなしじゃないですか」
むにっと頬を引っ張られた。
……そういう顔?
……ライバル?
話がよくわからない。
ただ瞬きを繰り返していれば、碧は優しく微笑んでまた手をひいて歩き出す。
ドキドキがとまらない。
今だれかと会うのは恥ずかしくて下を向いて歩いた。