お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


渡されたものを見れば、それは……お金で。
3つ折りになってる1万円札。


「えっ、あの……」
「久しぶりだから、お小遣いだよ」


「えっ」


お小遣い!?
そ、そんな……ありがたいけど、受け取れないよ。


「あの……」


返そうとした時──。




持っていたお金を横から取られた。


「お返しします」


お金を取ったのは碧で、彼がわたしの代わりに一条組の組長さんへと返す。


「碧、おまえも1年でずいぶんでかくなったなぁ」


碧を見て笑う組長さん。


「お嬢、簡単に受け取ってはいけませんよ。あとでなにを要求されるかわかりませんから。
お小遣いをもらった立場になると、なにかを頼まれた時に断れないものです」


碧はわたしによく言い聞かせるように言う。


……要求?
なにか、裏があったのだろうか。


「さすが、経験者は語るな」
「俺も昔、簡単に受け取ったことを後悔しましたよ。まさか一条組の組長直々に、仕事を山のように任せられるとは思いませんでしたから」


組長さんと碧の会話を聞けば、まさかの。
碧も受け取って、要求されていたなんて。

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