お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
危ない危ない……。
優しそうに見えて、実は怖い人なのかもしれない。
「どんな時でも恩を売っておいたほうがいいと思ってね。茉白ちゃんにはうちの暁なんてどうかな、って思って渡そうとしただけだよ。
断れなさそうな性格だから1回くらいならお見合いしてくれるかな、って」
耳を疑ってしまうような言葉。
確かに組長さんの口から出て、「えっ」と声が出る。
お、お見合い……。
一条組の若頭と、わたしが……。
「だめです。お嬢は絶対だれにもあげませんので、諦めてください」
碧は私の手を引っ張って、自分の背中へと誘導。
「碧の大切な子なんじゃ諦めるよ。いろいろ考えて悪かったね。
これは碧にあげよう」
一条組の組長さんはにこりと笑うと、返されたお金を今度は碧に渡そうとする。
が、碧は瞬時に「いりません」と返して。
「タバコ吸う時間なくなりますよ」
碧がそう言えば、「そうだったそうだった」と言いながら組長さんはタバコを吸いに行ってしまった。