お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「お嬢、行きましょう」
手をひかれて、碧について行く。
……さっきの言葉、嬉しかった。
碧はどういう気持ちで言ったのかはわからないけど。
変に期待しちゃだめだというのはわかっているけど、ついにやけそうになる。
口元がにやけるのを必死で我慢していれば、すぐに到着した部屋。
碧が襖を開けたそこは、小さな個室。
小さな個室だけど……いろいろとすごい。
窓から見える庭園。
花瓶に入った綺麗な花があって、テーブルと座布団までちゃんとある。
ここを1人で使っていいなんて、すごく贅沢。
「お腹すくかもしれませんが、これで我慢してくださいね」
彼がポケットの中へと手を突っ込んで、出したもの。
それは、ここに来る途中に寄ったコンビニで買っていた、小さなケースに入った飴玉。
小指の爪くらいの大きさの飴玉をひとつ取り出すと、わたしの口元に近づけてきた。
た、食べさせる気!?
こんなところで……!
でも、碧が食べさせてくれるのを拒否すると、もうしてくれないかもしれないし……!