お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「お嬢、行きましょう」


手をひかれて、碧について行く。


……さっきの言葉、嬉しかった。
碧はどういう気持ちで言ったのかはわからないけど。


変に期待しちゃだめだというのはわかっているけど、ついにやけそうになる。

口元がにやけるのを必死で我慢していれば、すぐに到着した部屋。


碧が襖を開けたそこは、小さな個室。


小さな個室だけど……いろいろとすごい。

窓から見える庭園。
花瓶に入った綺麗な花があって、テーブルと座布団までちゃんとある。


ここを1人で使っていいなんて、すごく贅沢。


「お腹すくかもしれませんが、これで我慢してくださいね」


彼がポケットの中へと手を突っ込んで、出したもの。
それは、ここに来る途中に寄ったコンビニで買っていた、小さなケースに入った飴玉。


小指の爪くらいの大きさの飴玉をひとつ取り出すと、わたしの口元に近づけてきた。


た、食べさせる気!?
こんなところで……!
でも、碧が食べさせてくれるのを拒否すると、もうしてくれないかもしれないし……!

< 257 / 431 >

この作品をシェア

pagetop